邪悪なPUIPUIモルカー『マッドゴッド』レビュー【ネタバレ無し】

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人生にはフィル・ティペットが必要だ     ——–スティーヴン・スピルバーグ

巨匠であり、師であり、神だ         ——–ギレルモ・デル・トロ

彼以上のマスターはいない             ——–ポール・ヴァーホーヴェン

あらすじ

人類最後の男に派遣され、地下深くの荒廃したアンコウ世界に降りて行った孤高のアサシンは、無残な化物たちの巣窟と化したこの世の終わりを目撃する。
引用元:12/2(Fri)公開『マッドゴッド』公式サイト

徹底的な視覚的グロテスクデザイン

マッドゴッドではクリーチャーデザインがかなりキマっている。これだけで見る価値は十分あるしなんならもっと払っていいレベル。どれもこれもが悪夢を見せつけられているようや醜悪なビジュアルをしており、またそこにはとてつもない繊細なこだわりも見えてくる。下半身が爬虫類で上半身は人間なドラム缶に住むクリープ、頭と手が奇妙なアンバランスさで成り立っており剥き出しの歯茎とひん剥いた眼球が特徴的で持っている左手に持った出刃包丁がチャームポイントなシー・イットなど一度見たらしばらく脳の片隅に生息しはじめるような生き物達がわんさか出てくる、汚いこびと図鑑みたいなもんだと思うと割と面白いかもしれない。

もはや人によっては嫌悪感を抱くほどの露悪的なデザインのクリーチャーもちらほら見かけるのでこの段階でかなり人を選ぶタイプの映画になってしまってはいる。だがそれでいい、万人受けを狙うと無難なものしかできない。だからこそ、むしろ観る人間をふるいにかけるくらいが丁度いいのだ。

説明ゼロでもなんとなくわかる不思議

この映画、セリフなんてものが一切存在せず唯一ある文章は聖書からの引用(旧約聖書のレビ記?)のみ。しかし見ていると不思議なことになにが起きているかが察することが出来る、ていうか割と直球。言葉はないが動きでなにが伝えたいかがわかりやすく、常にガスマスクをしており表情の見えないはずのアサシンや顔がないはずのシットマンの表情がなぜか観てる側には伝わってくる。

一人の天才が閃いた狂気の産物

それもそのはずで本作の監督フィル・ティペットは『スター・ウォーズ』『スターシップ・トゥルーパーズ』や『ロボコップ』などの作品の特殊効果を手掛けており、アカデミー賞を二度受賞しているまさに巨匠ともいうべき存在である。そんな彼が紆余曲折ありながら制作期間30年という膨大な時間を経て本作は制作されている、まさに血と臓物の結晶だ。作品にかける執念とドラッグのような依存性こそが怪作がこの世に生まれ落ちる条件なのかもしれない。

間違いなく良作

個人的にはマッドゴッドはとても好きな映画だ。グロテスクな世界観やどこか作り手の異常なこだわりを感じる構図など私的にはどストライクであり、少なくとも良作のポジションだとは思っている。しかしながら、ストップモーションアニメとはいえその容赦のないゴア表現や生理的嫌悪感を催すようなクリーチャーデザインは少なくとも一般受けするようなものではないだろう。

だがこの映画
・観る人を選ぶ
・独特すぎる世界観
・意味不明な展開がある
・製作者のこだわりが感じ取れる
などの点から十数年後にはカルト映画の1つになっているのではないかと私は思ってみたりしている。

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